宮城県の中心、仙台市以北の地域では、伝統的な篠竹細工のほか、
太い真竹や鈴竹、またたびなどを使った細工も見られます。
その中でもこちらは黒川郡大和町(たいわちょう)の宮床(みやとこ)という集落で、
産地で「ほうき竹」と呼ばれる細い竹(鈴竹)と桜の皮を主な材料として作られている箕です。
2タイプとも、先端部の横幅60cm以上と大ぶりです。
産地では、この大きさの箕が小豆などの穀物を選別する「実用」の箕とされていました。
この大きさより小さい箕は「民芸箕」と呼ばれ、
家庭内で使ったり、お供え物を置いて飾ったりする目的で作られています。
実用箕は2種類あり、箕の先が平らなものを「先なし」(写真左)、
とがっているものを「先あり」(写真右)と分類しています。
先端部以外の作りは「先なし」、「先あり」共に同じです。
横をほうき竹(鈴竹)、縦を桜皮で編んでいます。
編み目は全国津々浦々、数ある箕のなかでもかなり細かい方です。
編みを担当されるのは奥様、材料取りや仕上げは旦那様と二人三脚で仕上げられています。
10代の頃からこの箕づくりに携わってきた奥様の編みの細やかさにはため息が出ます。
ほうき竹と桜の皮は両方硬めの素材ですので、編み目がずれたり、すき間ができたりしないよう、
縦に柔らかい藤(ふじ)の蔓をほぐしたものが挟み込まれています。
これにより、小さい穀物も漏らすことなく、風でごみやちりだけを飛ばすことができるのです。
奥までその編み目が続きます。
また、とても細かい話ですが、先端部の方と奥の方は竹の肉部分が内側になっていて、
真ん中部分は竹のつるつるの表皮が内側になっています。(写真真ん中あたりが分岐です)
旦那様にお聞きしてみると「それはただの化粧だっぺ〜」とおっしゃっていましたが、
おそらく、奥と先端に摩擦がかかる肉部分を、真ん中部分は滑りやすいように、
計算して編まれていると思います。
内側の角は箕の作り方に特徴的な、
正面と側面をあじろ編みで縫い合わせる部分が見えます。
裏返してみると、二つの面が見事にしまい込まれています。
大和町の箕は編み合わせるだけでなく、麻紐でさらに縫い留めています。
背面も同様に美しい編み目が続きます。
裏返した背面全体の姿が、どうしても愛らしく見えてしまいます。
肩の盛り上がりに、先端に向けての開き具合、とてもいい形です。
縁部分は産地でソゾミ(ガマズミの一種)と呼ばれる木の枝2本で編み目を挟み、
ほうき竹も1本入れる、3本体制です。
そして、横編みに使っているほうき竹を縁にそってうまく折りたたみ、それを麻糸で縛っています。
先端部まで、折りたたんで縛ってを繰り返していきます。
これは背面の部分です。麻紐を使い、編み目と縁を縛り留めています。
それでは、2タイプそれぞれご紹介します。
こちらは「先なし」タイプです。
横幅約65cm、奥行54cmほどで高さが約17cmです。
箕の先端部がきれいに平らにそろっています。これが「先なし」と呼ばれる所以です。
「先なし」タイプは、縁の先端部分も短めの仕上がりです。
「先なし」は他の地域で作る箕と形は似ています。
産地周辺においてはこのタイプの箕を庭や畑仕事での「ちりとり」として使っていたといいます。
今考えるとなんて贅沢な使い方なのかと思ってしまいますね。
続いてこちらは、「先あり」タイプです。
横幅約72cm、奥行60cmほどで高さが約15cmです。
先ありの「先」がここです。このとがった部分が宮床箕(みやとこみ)の最大の特徴です。
この箕を使う地域の方々はこの部分がないと、使いにくいそうです。
足の部分もかっこいいです。12cmほど、シュッと出ています。
この「先あり」の箕の使い方が他の地域同様、
穀物や豆類をふるって、ちりを飛ばし、選別するためだったと言います。
この大和町宮床の箕は両端を持って、力をぐっと内側に入れるとよくすぼみます。
柔軟性があり、袋に入れ替えたりするときにもすぼめて入れることができます。
同じご夫婦がお作りになる「肥料振りかご」の原型であるこの箕、
規則正しく編み上げられた部分はまさに圧巻です。
縦の桜皮の茶色と横のほうき竹の色のコントラストも見事で、
壁にかけてあるだけで、きっと十分インパクトのあるインテリアになります。
このサイズ、ぜひ実用でお使いいただきたいですが、
現代において、穀物を選別したりすることはなかなか機会が少ないかもしれません。
箕は干し野菜をするときにお使いいただくのもいいですし、
庭仕事でちりとりや収穫用として使っていただくのに良さそうです。
「先なし」と「先あり」、お好みのタイプをお選びくださいませ。
サイズ/重量
先なしタイプ:約65x54x高さ17cm/縁の足部約4cm/960g
先ありタイプ:約72x60x高さ15cm/縁の足部約12cm/1040g
天然素材を使った職人手作りの為、一つ一つの形・風合い・色味が若干異なります。
予めご了承いただいた上でご購入いただけると幸いです。表示サイズ、重量などは目安となります。
お取り扱いについて
・ささくれや破片でお体や衣類などを傷めないようご注意ください。
・水に濡れたらカビが生えないよう、できるだけ水を切り、できればふき取り、
日陰の風通しのいいところで乾かすようにしてください。